聖墳墓教会で起こったギリシャ正教とアルメニア使徒教会の修道士の乱闘

 

聖墳墓教会（せいふんぼきょうかい）は、エルサレム旧市街（東エルサレム）のキリストの墓とされる場所にある教会です。

 

ゴルゴタの丘はこの場所にあったとされています。

 

コンスタンティヌス１世は３２５年頃に、キリストの磔刑（たくけい、たっけい）の場所、ゴルゴタの丘に教会を建てることを命じました。

 

コンスタンティヌス１世はキリスト教を初めて公認したローマ皇帝です。

 

初めてのキリスト教徒皇帝としても有名です。

 

キリストの遺骸がアリマタヤのヨセフらによっていったん葬られ、３日目に復活したという墓もゴルゴタの丘の近くのはずでした。

 

ニカイア・コンスタンティノポリス信条に従えば、イエス・キリストは十字架上で死に、葬られるが復活し、４０日後に天に昇ったとされます。

 

したがって、いったん葬られた場所は存在しますが、キリストの遺骸は地上には残されていない。

 

ということになりこのあたりはややこしいです。

 

エルサレムは２度のユダヤ戦争によって破壊され、１３５年ごろにはローマ風の都市へと再開発されています。

 

このため、ゴルゴタの丘の位置は分からなくなってしまっていたのです。

 

伝えられているところによれば、コンスタンティヌス１世の母ヘレナ（キリスト教徒）が３２６年にエルサレムを訪れ、当時はヴィーナス神殿となっていたこの地で磔刑に使われた聖十字架と聖釘（せいてい）などの聖遺物を発見したとされ、ゴルゴタの丘と比定したそうです。

 

※（せいてい）は、聖遺物のひとつで、イエス・キリストが磔にされたときに手足に打ちつけられた釘であるとキリスト教内で言い伝えられているもの。

 

ヴィーナス神殿を取り壊して建てられたのが現在の聖墳墓教会です。

 

ヘレナが発見した十字架３つの十字架のうちのひとつに触れた女性の病が癒されたので、これがキリストが磔にされた聖十字架と分かったそうです。

 

ヘレナは聖十字架の一部をエルサレムに残し、他の一部と聖釘をコンスタンティノポリスに持ち帰りました。

 

エルサレムの聖十字架は聖墳墓教会に置かれていましたが、ヘラクレイオス帝の時代の６１４年にサーサーン朝ペルシアに奪われました。

 

ヘラクレイオスの東ローマ帝国はニネヴェの戦い (６２７年)でサーサーン朝軍を破ると６２８年に聖十字架を取り戻しコンスタンティノポリスに持ち帰りましたが、後にエルサレムに戻されました。

 

聖十字架は１００９年ごろからはエルサレムのキリスト教信者たちの手で隠されていました。

 

１０９９年に第１回十字軍が聖十字架を発見したとき、黄金の十字架にその木片が埋め込まれていました。

 

戦のたびにこの聖十字架は戦陣に持ち込まれたが、１１８７年のハッティンの戦いで奪われ、失われました。

 

早い時期から聖十字架は分割され、あちこちに置かれたようです。

 

また１２０４年に、フランスの諸侯とヴェネツィア共和国が主体の第４回十字軍が東ローマ帝国の首都であったコンスタンティノポリスを占領しました。

 

このとき十字軍は、他の財宝とともに、金や宝石で飾られた聖十字架の断片を奪い、持ち帰っています。

 

その他聖十字架の破片であると主張される木片は多いですが、総計すると十字架数十本分に当たり、それゆえほとんどがにせ物のようです。

 

聖墳墓教会は正教会では復活教会ともよばれています。

 

ギリシャ正教系の正教会、アルメニア使徒教会等においてはエルサレム総主教座聖堂であり、中東地域の教会行政の中心的役割をになっています。

 

聖墳墓教会の場所はエルサレムの旧城壁内にありますが、処刑場は城壁外にあったのではないかという疑念も出されていて話は少しややこしいです。

 

聖墳墓教会とは別に、城壁外に「園の墓」（Garden Tomb）があり、聖公会などプロテスタントの一部教派に支持されています。

 

「園の墓」（Garden Tomb）はイエス・キリストがゴルゴタの丘で十字架刑にあった後に葬られた墓と比定される聖所のうちのひとつです。

 

エルサレム内城のすぐ北にあります。

 

新約聖書の四つの福音書の記述やキリスト教の伝承などから推定されるイエス（キリスト）の最後の歩みはヴィア・ドロローサ（ラテン語：Via Dolorosa（「苦難の道」の意））といわれています。

 

いずれの福音書でも、イエスは十字架を背負って総督ピラトの官邸（プラエトリウム）から刑場のあるゴルゴダの丘までの道のりを歩いたとされています。

 

イエス（キリスト）の処刑から約二千年後の現在では、ヴィア･ドロローサの出発点はエルサレム旧市街北東のイスラム教地区にあるライオン門付近、終着点は旧市街北西のキリスト教地区の聖墳墓教会内にあるイエスの墓です。

 

キリスト教の伝承によれば、イエス・キリストは西暦３０年または３３年にローマ人によって磔刑（たくけい、たっけい）つまりはりつけの刑に処せられました。

 

キリストの遺体は石灰岩の洞窟から切り出した「石墓」の上に安置されました。

 

遺体に香油を塗るためにマグダラのマリヤとヤコブの母マリヤは「石墓」を訪れました。

 

その二人に加え、サロメという女性を加えた三人が、香料を買い、「石墓」に行きました。

 

これは亡くなった方の身体に塗るものです。

 

現代の死に化粧と似たようなものです。

 

女性たちは、キリストの遺体がなくなっているのを見つけました。

 

福音書により、まいてあった布がそのままの形を残しておかれていた、とあります。

 

このあたりは油を塗りに行った女性たちについての諸説やキリストの身体だけが無くなっていたなど別の説もありややこしいです。

 

 

聖墳墓教会はカトリック教会、東方正教会、アルメニア使徒教会、コプト正教会、シリア正教会の複数教派による共同管理となっていて、一日中いずれかの教派によるミサ・聖体礼儀などの公祈祷が行われています。

 

エチオピア正教会は正式な独立教会として認められていないため、オスマン帝国などのイスラム教勢力が強かった時代に迫害から教会を守護し続けていたにもかかわらず、正式な行事には参加出来ません。

 

聖墳墓教会は、現在はキリスト教の６つの教派（ギリシャ正教会、ローマカトリック教会、アルメニア使徒教会、コプト正教会、エチオピア正教会、シリア正教会）によって共同管理されています。

 

教会の中で、墓を含め、すべての教派の信仰の対象と考えられる部分は「現状維持法（ステイタス・クオ）」と呼ばれる規則に従って厳格に管理されています。

 

管理にかかわる問題は６つの教派すべてが同意しないと決定できません。

 

１９世紀初頭に建設されたエディクラは、１９２７年の地震によって大きく損傷していて、何十年も前から安全上の問題が指摘されていました。

 

英国統治時代の１９４７年に、危険な状態を見た英国当局が外側から補強しましたが、教会を管理する６つの教派の間の不和や財源不足のため本格的な修復にはいたらず、見苦しい外観のまま今日に至っています。

 

この乱闘は６つの教派の間の不和がよくわかる映像となっています。

 

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