中国 ネイルハウス
家の持ち主は67歳の羅保根(ルオ・バオゲン)。
この家に現在住んでいるのは羅さんと奥さんの2人。
以前は息子と嫁、孫2人の6人で住んでいたという。
2001年に60万元(約800万円)以上を払って家を建てた。
2年前に政府が提示した立ち退きの補償額はわずか26万元(約340万円)。
貧しくて貯金もなく、羅さん夫婦は仕方なくここに住んでいる。
建物の両側はすでに崩れかけ、雨が降ったら雨漏りがする。
村の担当者も
「羅さんの状況は把握している。
故意に立ち退かないのではなく、補償が少なくて立ち退けない」
と同情的である。
大溪鎮政府は2012年11月22日、羅さん世帯について、
「政府職員による度重なる思想工作の結果、立ち退きの補償政策を受け入れることで基本的に合意している」
と発表した。
しかし、当の羅さんは同日、
「立ち退きに合意などしていないし、引っ越しもしない」
「新しく家を建てるには80万元(約1060万円)以上かかる」
「政府の提示額とは差がありすぎる」
と話している。
2012年11月30日午後6時35分(現地時間)、羅保根さんは親戚と地元政府の職員との3者による話し合いの結果、立ち退き同意書にサインしたという。
大渓鎮政府宣伝部はこれまで、
「立ち退きを強行することは絶対にない」
と話していたが、11月30日の取材では
「この事案について大渓鎮政府は答えることはできない。温嶺市政府に聞いてくれ」
とのこと。
そこで温嶺市の対外宣伝部の蘇黎華(スー・リーホア)主任に電話をすると、
「まだ話し合いはついていない。明日の朝になればはっきりする」
との返事。
だが、この電話の向こうでは何かを壊している大きな音がしていた。
羅保根さんは電話で
「今忙しいんだ」
「ここには人が大勢いる」
「もうすぐ家も取り壊される」
「うるさくて何も聞こえない」
と話した。
再び羅さんに電話をすると、今度は羅さんの親戚が電話に出て
「取り壊しが始まった」
「親戚や友人たちが引っ越しの手伝いをしている」
と答えた。
「どうして急に立ち退きに同意したのか?」
という質問に、この親戚の男性は
「ここ2,3日、連日色んな人が来て私達に圧力をかけた」
「補償額には合意した」
「足りない分は親戚や友人に寄付してもらって家を建てるつもりだ」
と話した。